SDGsに取り組む奈良シリーズ①フードロス問題解決型洋菓子を販売する【奈良祥樂】

昨年12月、県商工会連合会、橿原商工会議所主催による『ビジネスマッチなら「NARA」から広げるSDGsActions』のプレス発表会が行われました。奈良県内でSDGsを取り入れている事業者9社が参加。食品や原材料のロスを減らすなど、新たな発想や工夫によって開発されたSDGs(持続可能な開発目標)に絡めた商品やサービスを紹介しました。

「ナラトワ」では、この9社の事業者のうち7社を独自に取材。それぞれの企業の活動をシリーズでご紹介します。シリーズ第1回目は、奈良祥樂の「奈良の果実のカトルカール」(4種)をご紹介します。

奈良の名物菓子「らほつ饅頭」でお馴染みの株式会社奈良祥樂。かりんとう生地で餡を包み込み、米油でカリッと揚げた逸品で、昨年「日本ギフト大賞 奈良賞」を受賞したのでファンの方も多いはず。奈良の素材にこだわったオリジナルのお菓子の製造・企画・販売、そして流通卸、さらに直営店舗を展開されている会社で、数々のヒット商品を出されています。

奈良祥樂では、県内企業とコラボして開発した洋菓子「奈良の果実のカトルカール」(4種)を昨年12月に発表。捨てられる素材を使って製造したとのことで、いったいどんなお菓子なのか興味津々!法隆寺そばにある直営店舗にて、企画販売部長の川西美喜さんにお話しを伺ってきました。

法隆寺参道を出てすぐ、国道25号線沿いにある奈良祥樂法隆寺本店
企画販売部長の川西美喜さん

Q:さっそくですが、フードロス問題を解決するために製造されたというお菓子の開発は、どのような経緯でスタートされたのでしょうか?

弊社はさまざまなメーカーや産学官連携の取り組みをして、奈良の特産品を使用した商品開発をしております。昨年3月に、近畿大学農学部の学生と柿ワインの製造時に出る酒粕を使ったパウンドケーキを商品化しました。東京・新橋にある「奈良まほろば館」にて販売させていただいたところ、とても人気が高かったことから、シリーズ化が決定。新たに県内企業とコラボして、地域課題をお菓子で解決する取り組みを始めました。昨年12月に「奈良の果実のカトルカール」としてリニューアルし、現在4種類の販売を始めたところです。

カトルカールは、いまは法隆寺本店のみで販売中

Q:カトルカールとはどういう意味なのでしょうか?

パウンドケーキのフランス語です。4つが集まったという意味で、バター・砂糖・卵・小麦粉の4つの材料を同量ずつ使用して作っていることが由来となっています。「奈良の果実のカトルカール」は、白餡を隠し味に入れ、洋酒に漬けた果実を混ぜ込み、しっとりとしたお菓子に仕上げております。

規格外の柿を使ったセミドライフルーツ(左)と柿ワインの酒粕(右)。カトルカールにはこれらを洋酒漬けにして再利用している

Q:どんな果実を使っておられるのか、それぞれ教えていただけますか?

「梅酒の実のカトルカール」(486円)

まずは梅乃宿酒造の梅酒の実です。梅酒をつけた時に出る梅の実をダイスカットにして生地に練り込み「梅酒の実のカトルカール」にしました。梅酒の芳醇な香りと梅の実のさわやかな酸味が香るリッチな味になっています。

「はっさくのカトルカール」(486円)

次に、松田果樹園+(プラス)の八朔の皮です。こちらは八朔ジャムを作った際に出る八朔の皮をピールにして洋酒に漬けこんだものを練り込み「はっさくのカトルカール」にしました。酸味とほのかな苦みがケーキの甘さを引き立て、さわやかな洋酒の風味が香る大人のおいしさです。

「柿とミックスフルーツのカトルカール」(486円)

そして、先にご紹介した梅の実ダイスカットと八朔ピールの洋酒漬け。さらに、五條の干し柿をダイスカットやスライスして洋酒に漬けたもの。柿ワインの製造時に出る酒粕を乾燥させて粉末にしたもの。これらすべてを入れた奈良づくしの「柿とミックスフルーツのカトルカール」です。楽しい食感と多彩な風味が絶妙なハーモニーをもたらします。

「奈良の果実のカトルカール」(全4種類・各486円)

4つめは、地域の特産品、斑鳩町法隆寺の界隈でとれた黒米、古代米を広めていきたいという思いで開発した「黒米と柿のカトルカール」です。こちらは遊休農地で生産したサヨムラサキと言う紫黒米を米粉にして練り込み、干し柿のダイスカットを入れています。黒米の収穫の時期に合わせて順次販売していきます。

 Q:どれも今まですべて捨てられる果実だったと思うと、味わいもひとしおな気がします。開発には相当苦労されたのでしょうね。

最初は戸惑うことばかりで、開発に1年かかりました。洋酒の漬け込み時間も2日間から1週間漬けないといけないものなどあり、試行錯誤の繰り返しでした。それぞれ洋酒の種類も変えていますし、生地のレシピも違うんですよ。ここまでしっとりしたケーキにするのは職人技が詰まっています。

法隆寺本店ではその日の朝、揚げたてのらほつ饅頭が買える
お店の奥にカフェコーナーがある
店内メニュー 一例

Q:法隆寺本店には、カフェが併設されているんですね。

 近隣の方がよくご利用されて、ゆっくり時間を過ごしておられます。お菓子は、地域の方が奈良のお土産として贈答用に買っていかれることが多いですね。

正倉院宝物の文様などをデザインした包装はどれも美しい

Q:ギフト用のパッケージが素敵ですね。奈良好きにはたまりません。他府県の方へのお土産に最適な商品展開が心をくすぐります。

 ありがとうございます。これからも地域に根ざした商品を提供できるよう、他にはない独自の特徴を持った新商品を開発していきたいと思います。食と農、そして観光の発展に寄与できるよう、さまざまな企業と地域課題に取り組んで参ります。古都・奈良の地からお菓子を通して、楽しく豊かなひとときをお届けできたらと思っております。

Q:どうもありがとうございました。

奈良祥樂【法隆寺本店】

住所:奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺1‐7‐24

電話: 0745-44-3703   

営業:10:00~17:00

定休日:水曜日

奈良祥樂

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