SDGsに取り組む奈良シリーズ⑤椎茸粉末の機能性食品【合同会社knot】

昨年12月、県商工会連合会、橿原商工会議所主催による『ビジネスマッチなら「NARA」から広げるSDGs Actions』のプレス発表会が行われました。奈良県内でSDGsを取り入れている事業者9社が参加。食品や原材料のロスを減らすなど、新たな発想や工夫によって開発されたSDGs(持続可能な開発目標)に絡めた商品やサービスを紹介しました。

「ナラトワ」では、この9社の事業者のうち7社を独自に取材。それぞれの企業の活動をシリーズでご紹介します。第5回目は、合同会社knotの椎茸粉末の機能性食品です。

新大宮駅から南へ徒歩15分、住宅街の一角に、椎茸を栽培している農園「しいたけ農園Musubi舎」があるのをご存知でしょうか。経営しているのは、就労継続支援事業をされている合同会社knotです。6年前から農福連携事業の一環で行っているとのことで、このほど椎茸栽培から発生する廃棄ロスをより良い形に消化するために「これすてさげをっ!」という機能性表示食品を開発。昨年9月に商品化して新発売されたばかりとのことです。さっそく新大宮のしいたけ農園へ行き、所長の上田雄斗さんにお話を伺ってきました。

「しいたけ農園Musubi舎」きのこ研究所所長の上田雄斗さん

Q:合同会社knotについて教えていただけますでしょうか?

弊社は就労継続支援A型事業所として2016年に立ち上げ、今年で8年目になります。2018年に農福連携の一環として椎茸栽培を始め、現在30名ほどの利用者が働いております。給料を得て自立への目標を持ちながら、椎茸栽培にやりがいを持って働いていただいています。

Q:農福連携はどんな可能性を秘めているのでしょうか?

農業と福祉が連携することで、障がい者が農業分野での活躍を通じて社会参画を実現し、自信や生きがいづくりの場を生み出します。また、農業就業人口の減少や高齢化が進む農業分野において、新たな働き手の確保にもつながっています。今後さらに全国に広がっていく取組みだと思います。

1階が椎茸農園、2階は乾燥椎茸の選別や包装などの作業場

Q:農園というと郊外にあるイメージなのですが、なぜ住宅地でされているのでしょうか?

就労支援をするために従業員の方々が通いやすい立地を第一とし、次に地域貢献を念頭に入れて、この場所を選びました。おかげさまで、産地直結型の農業ビジネスが可能となり、商品を新鮮なうちに消費者にお届けできるため、毎日完売するほど人気です。

Q:椎茸はどのように育てるのでしょうか?

椎茸には「原木栽培」と「菌床栽培」の2種類あり、私たちの農園では菌床栽培をしております。おがくずに米ぬか、ふすまなどの栄養剤を混ぜて固め、椎茸菌を植え付けた菌床を、温度と湿度で管理された施設内の棚に配置します。この菌床を横に倒したり、ひっくり返したり、水につけたりと、定期的に刺激を与えると芽が出てきて、1週間くらいで収穫できます。菌床は半年のサイクルで交換し、季節を問わず安定した品質の椎茸を年中収穫し続けることができます。

棚に並べられた菌床を一定の温度と湿度で管理していく
横転させたり、ひっくり返したりして、菌床に刺激を与える
パックを被せてから反転する。菌床の上面を浸水し刺激を与える

Q:毎日どんどん成長する椎茸を見るのは楽しそうですね。

自分が世話した椎茸が立派に育ってくれて出荷されていくのを見ていると、自分自身の成長も感じやすいようです。みなさん真面目に作業に取り組んでくださいます。売り上げもおかげさまで上がってきていますが、障がい者利用者の雇用を安定させるためには、もっと規模感を広げて行かなければなりません。椎茸栽培の事業面での課題として、販売のできない規格外商品の廃棄問題なども見えてきました。

上田さんが手に持っているのは規格外の椎茸

Q:販売できない椎茸というのは、どれくらい出てくるものなのでしょうか?

「しいたけ農園Musubi舎」では、年間1万個の菌床を取り扱い、約10トンの生椎茸を収穫しています。そのうち、出荷不能の規格外商品は15%ほどです。全国の大規模農園でも平均2割近くは廃棄処分となっているのが現状です。これは、年間生産量から推定すると約16,000トンが廃棄されていることになり、金額にすると、なんと32億円の損失規模になります。そういったロスをなくしたいという思いから、廃棄椎茸をより良い商品にできないか考えました。そこで、椎茸を乾燥させて粉末にし、生活習慣病の予防効果をアピールできる機能性表示食品の開発に挑みました。

Q:椎茸は食物繊維やビタミン、ミネラルなどが豊富ですから、生活習慣病に良さそうですよね。

脳梗塞、心筋梗塞、腎不全、高血圧などは、乱れた生活習慣による動脈硬化が大きな原因です。動脈硬化の主な要因は高血圧とコレステロールです。日本人の4人に1人は脂質異常症と言われ、その約70%は、高血圧を合併しており、関連性が深いことがわかっています。そこで開発したのが、血圧高めの方の血圧を下げるGABAと、血中のLDLコレステロールが酸化され、酸化LDLコレステロールになることを抑制させるオリーブ由来ヒドロキシチロソールを配合した椎茸粉末出汁「これすてさげをっ!」です。

機能性表示食品「これすてさげをっ!」

Q:ネーミングがおもしろいですね。

代表が考えた、コレステロールを下げるというダジャレです。「これすてさげをっ!」を料理に入れると、旨味や風味が増し格段に深みが出ます。椎茸を微粉末まで粉砕しているので、ダマになりません。どんな料理にも使いやすく、たこ焼きやお味噌汁、卵料理、ハンバーグ、チャーハンなど多くの料理にうまく馴染んでくれます。加熱しても機能性の効果は保たれます。1袋86.6g入り、1日6.2g摂取を目安で14日分となっています。毎日の食事で、血圧とコレステロールのケアができます。

Q:どこで購入できるのでしょうか?

日本全国どこからでも弊社のオンラインショップ(3000円)にてお買い求めいただけます。店頭販売としては、奈良県内では「JA奈良まほろばキッチン」のJR奈良駅前店と橿原店、「奈良のうまいものプラザ」、「なら歴史芸術文化村」、「和ごみ館」などでご購入(地域限定価格2700円)できます。

Q:Musubi舎に行って直接買うこともできるのでしょうか?

はい。Musubi舎の農園直売所まで足を運んでいただけましたら直売価格の2200円でご購入いただけ、ご希望でしたら椎茸栽培の見学などもしていただけます。見学は平日のみご予約を受け付けておりますので、どうぞお気軽にお越しください。生椎茸、乾燥椎茸、乾燥木耳、佃煮などもありますよ。。

向かいにある作業場では加工品の製造や袋詰め、商品の直売もしている
収穫した椎茸を選別し袋詰めしていく
真ん中のしいたけ農園Musubi舎のシールが目印

Q:椎茸栽培に取り組む就労支援施設として、廃棄ロスを減らすこの商品は、今後の椎茸栽培事業に大きな可能性を秘めていますね。

この事業が成功することで、生きがいを持って取り組む利用者の頑張りが報われ、安定した雇用の実現に向けて大きな1歩となります。「これすてさげをっ!」が皆様に愛される商品になるとうれしいです。

Q:どうもありがとうございました。

事業所名:合同会社knot
knot:奈良県奈良市大宮町4-260-1シティーコープ新大宮103
しいたけ農園Musubi舎:奈良市四条大路1-2-32(直売所)
電話:0742-81-9586
営業時間:9:00~14:00
休日:なし
合同会社knot
しいたけ農園Musubi舎

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