SDGsに取り組む奈良シリーズ⑥車輪脱落防止ナット【スリーウッド】

昨年12月、県商工会連合会、橿原商工会議所主催による『ビジネスマッチなら「NARA」から広げるSDGs Actions』のプレス発表会が行われました。奈良県内でSDGsを取り入れている事業者9社が参加。食品や原材料のロスを減らすなど、新たな発想や工夫によって開発されたSDGs(持続可能な開発目標)に絡めた商品やサービスを紹介しました。

「ナラトワ」では、この9社の事業者のうち7社を独自に取材。それぞれの企業の活動をシリーズでご紹介します。第6回目は、「スリーウッド」の車輪脱落防止ナットです。

「スリーウッド」は、奈良県桜井市にて、タイヤやアルミホイールの販売をしています。代表の森啓二さんは40年勤めた「奈良・近畿ヨコハマタイヤ」を60歳で定年退職した後、この会社を立ち上げました。後輩からはタイヤ業界のエジソンと言われていたそうで、独立後もタイヤに関するさまざまな商品を開発するなど、ソリューションビジネスを事業として展開しています。今回、SDGsの取組みとして発表されたのは、①タイヤ空気圧警報器、②顧客管理LINEアプリメンテナンスシステム、③車輪脱落防止ナットの開発・販売についてです。さっそく田原本駅から車で8分のところにある「スリーウッド」に伺い、お話を伺ってきました。

スリーウッド代表の森啓二さん

Q:「奈良・近畿ヨコハマタイヤ」を定年退職されて、このタイヤ販売の店を始められたのはなぜだったのですか?

やっていることは商品開発ですから、前職と同じなんですよ。発明するのがとにかく好きなんですよね。こんなん開発したら面白いなって、世の中に必要とされるものを考えるのが楽しい。実は、大企業ではいろいろな制約があって開発しないものってあるんですよね。ちっぽけなものかもしれないけれど、自分の作りたいものを商品化できて、世間に評価してもらえる今がうれしいですね。

タイヤに関するソリューションビジネスを展開している

Q:SDGsの取組みについて、まずはタイヤ空気圧警報器について教えていただけますか?

タイヤの空気圧が低下したまま走行すると、燃費の悪化、乗り心地の低下、タイヤの摩擦が速くなり、車体がふらつく、バーストが置き、ハンドリングが悪くなるなど、さまざまな事故やトラブルを引き起こしてしまいます。空気圧低下を撲滅して、燃料やCO2削減、タイヤの早期摩耗の解決で資源の削減を目指そうと、最初に開発したのが、青色LEDの点滅でボタン電池で動くタイヤ空気圧警報器でした。タイヤのバルブに取り付け、空気が少なくなってくると、青色LEDが点滅して空気圧低下を教えてくれるというものです。

空気がなくなったらピカピカ青色LED光って知らせてくれる初号機

今は、スマホと連携させることができる空気圧警報器(TPMS)を販売しています。4つのタイヤの空気圧を数値で視覚化して、スマホで簡単チェックできます。また音声通知で、タイヤの表面温度が設定値を超えた時、空気圧が低い(高い)時、空気もれの発生時などを知らせてくれます。空気圧をベストな状態に保つと燃費や車の走行効率の向上などが見込めます。空気圧警報器(TPMS)でみなさまの毎日の安全をお守りできます。

空気圧警報器(TPMS)15000円

Q:タイヤの空気が減っているかどうかってわかりにくいので、こういう機器があると有難いですね。2つめの、顧客管理LINEアプリメンテナンスシステムについても教えてください。

簡単にいうと、LINEを使って、顧客と密接な関係を構築するシステムのことです。お客様にLINE登録していただくと、タイヤ空気圧充填、オイル交換、バッテリー交換、車検整備、車両のメンテナンス点検時期などをAIが予測し、通知します。うっかり忘れてしまいがちなメンテナンスの適正時期がわかるので顧客にとっては便利ですし、店側には定期的に顧客の来店を促すことができる利点があります。こういったシステムをスリーウッドのお客様にサービスする他、このシステム自体の販売も企業に行っています。産業と技術革新の基盤をつくるというSDGSに関連している事業です。

顧客管理LINEアプリメンテナンスシステム

Q: 3つめの、車輪脱落防止ナット事業とはどのようなものでしょうか?

トラックのタイヤの脱落事故が年々増えているのをご存知でしょうか?2011年では11台だったのが、2022年では140台にもなって10年前の1.5倍になっています。これは古い車が増加したため軸力の低下だと思われます。

Q:道路を走っているトラックから突然タイヤが外れて自分に迫って来たら怖いですね。

大型トラックのナットは過酷な条件で使われます。とくに、北海道や東北、北陸で脱落事故が多いのですが、その理由は、スタッドレスタイヤの装着のため、タイヤを取り外すことが多いため、ナットが緩みやすく成ったり増し締めを怠ればホイールが脱落してしまうのです。また、路面の凍結を防止するために使用される塩化ナトリウム(凍結防止剤)のせいで、ナットが錆びやすくなることで軸力の低下が原因のひとつです。

Q:タイヤの脱落の原因はナットの緩みにあるのですね。

そうです。大型トラックのナットが緩む原因は様々な要因があります。回転緩みと非回転緩みが有ります、大型トラックの後輪は回転緩みと非回転緩みが同時に発生して特に緩みます。
一例ですが、トラックのホイールに装着するナットは、2010年頃から国内規格のJISナット(左ネジ)から国際規格のISOナット(右ネジ)に変わりました。JISナットは左回転する車輪に対して左回転に閉めるため、ホイールにしっかり食い込みます。ISOナットは左回転する車輪に対して右回転に閉める上、ワッシャーがあるためにホイールに食い込みません。そのため緩みやすく定期的に増し締めする必要があります。しかしIS0ナットは、JISナットよりも部品数が少なく、作業効率が良いという大きなメリットがあります。

JIS規格ナットとISO規格ナットの違い

Q:それぞれのナットに、良い点と悪い点があるんですね。

そこで、ISOナットとJISナットのいいとこ取りのナットを開発しました。基本的にはダブルナットです。下部ナット凸型、上部ナット凹、の噛み合わせで緩み止め防止をしていまさらに下部ナットの凸型上部の周りを偏心させ上部ナット凹に食い込む構造です。
JISナットがホイールの穴に食い込む原理をISO規格のナットに応用して開発しました。

左がJISナットで右がISOナット。中央がスリーウッドの車輪脱落防止ナット

Q:スリーウッドが開発した新しいナットの登場により、ヒューマンエラーをなくせるというわけですね。

働き方改革によってドライバーの就業時間が厳しくなり、車両管理も効率化が必要になります。タイヤホイール点検は多くの時間がかかるため、ヒューマンエラーによる脱落事故が起きるリスクがあります。本事業は車輪脱落防止ナットを大型トラックに装着することで、ドライバーによる増し締め時間などの車両点検時間を1日30分、1ヵ月で10時間削減して、脱落事故を防止します。2023年10月より脱落事故を起こした運送会社には、行政処分が下されるようになったため、車輪脱落防止ナットの需要が高まると予測しています。

車輪脱落防止ナットは10個のうち半分だけ使用するのでも効果がある

Q:今後の活動についても教えてください。

近畿、三重県、愛知県で販売活動を行っています。全国タイヤ青年部会に出席したり、大阪、奈良トラック協会で講習会をしたりしています。大阪トラックフェスタでは、参加者から、「行政処分を受けないためやドライバーの雇用を守るために採用したい。」「ヒューマンエラーをなくしたい」、「安全安心して運行できるので早く導入したい。」「点検増し締め時間が短縮できるため車両管理や他の仕事ができる。」などのお声をいただきました。所ジョージさんにも「すばらしいナット、考えますなあ」というコメントをいただいています。トラックのナットは自然に緩みます。1日でも早くタイヤ脱落事故をなくし、ヒューマンエラーをなくすことを目指して、タイヤのプロとして安全で安心な社会貢献に尽力して参ります。

所ジョージさんからのメッセージが書かれた団扇を持つ森さん

Q:どうもありがとうございました。

事業所名:スリーウッド
住所:奈良県桜井市大西366-3
電話:0744-45-3009
営業時間:10:00〜18:00
休業日:日曜・祝日
スリーウッド

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