SDGsに取り組む奈良シリーズ⑦セミオーダー可能なカシミアニット【松井ニット】

昨年12月、県商工会連合会、橿原商工会議所主催による『ビジネスマッチなら「NARA」から広げるSDGs Actions』のプレス発表会が行われました。奈良県内でSDGsを取り入れている事業者9社が参加。食品や原材料のロスを減らすなど、新たな発想や工夫によって開発されたSDGs(持続可能な開発目標)に絡めた商品やサービスを紹介しました。

「ナラトワ」では、この9社の事業者のうち7社を独自に取材。それぞれの企業の活動をシリーズでご紹介します。第7回目は、「松井ニット」のオリジナルブランド「LOOP」のセミオーダー可能なカシミアニットです。

創業1965年以来、約60年の間ニット製品に特化し、真摯にものづくりに携わり続けてきた「松井ニット株式会社」。職人数わずか5名でありながら、最先端技術と半世紀以上に渡る職人の知識と経験を活かし、世界で愛される高品質な超一流ブランドの商品を今も生み出し続けています。磯城郡田原本町にあるこの小さなニット工場から、高級カシミアニットのセミオーダーができるブランド「LOOP」が誕生しました。襟・袖の織り方や、着丈・袖丈の長さを自由に指定できるとのこと。さっそく田原本町大網にあるニット工場に行き、代表の松井幸嗣さんにお話しを伺ってきました。

松井ニット株式会社代表の松井幸嗣さん

Q:ニット産業の変遷とともに、松井ニットはどのように歩んで来られたのでしょうか。

昭和36年に父が始めたニット工場を10年前に私が引継ぎました。創業時は国産ニットの需要が高まり、導入した新しい機械をフル稼働して多忙を極めたそうです。1980年代はDCブランドの流行とともに、技術的進歩を遂げました。しかしバブル崩壊後、海外からのニット製品の輸入が急増。国内の生産量が減少し、単価も下落、日本国内のニット製造業に打撃を与えました。現在、日本に流通するニットの99%は海外製品です。国内の生産量はここ10年で3分の1まで減少してしまいました。

コンピュータ制御で複雑な模様を編むことができる横編み機
蝋引きという糸にワックスをかけて巻きなおす機械

Q:2020年からは、コロナの影響も受けられたのでしょうか。

はい、消費や買い控えの流れはニット業界にも大きな影響を与えました。一方で、ネットで物を買う人が増え、高価なものであっても、価格と品質やサービスが一致していれば物が売れるようになってきました。私どもはそれをチャンスと捉え、生き残りをかけて地場産業の技術力で本当に良いものをお届けしたいと思うようになりました。そこで自社のオリジナルブランド「LOOP」を立ち上げることにしたのです。

ピンチをチャンスと捉え、自社ブランドに挑戦する

Q:価格で競争するのではなく、高級アパレルで培ってきた技術力の高さで勝負しようということですね。どういったブランドなのでしょうか?

「LOOP」はベーシックで飽きのこない、着るだけで心豊かになれるニットをコンセプトにしています。市場にたった5%しか流通していない最高級のカシミアを使用。糸の撚糸、織り、縫い合わせ、風合いを出すための洗いという作業も、すべて国内で仕上げております。着心地の良さを追求し、肩の切り替え線を中心より後ろにずらすことで、ボディをすっきり美しく見せるデザインにしました。

ミディアムグレーの細リブ、Vネックセーター

最大の特徴は、セミオーダーができることです。これまでも、「スーツやシャツはオーダーがあるのに、なぜニットにはオーダーがないの?」といった質問を何度も受けてきたんですね。ニットはある程度伸びるので、オーダーするという意識が芽生えなかったからなのかもしれません。でも、手が長い人、お腹周りが大きい人、背の高い人など、標準サイズではしっくりこないという方々の要望を応える、ニットのオーダーがあってもいいのではないかと思ったのです。

Q:1着だけのオーダー製造って大変そうですね。

まず、注文を受けてからカシミアの糸を1着分の小ロットで発注します。CADを使い、お客さまのご要望に合わせて製図を起こし、編み機のコンピュータに読み込ませます。編みあがったら洗いにかけ、縫製し、糸の始末をするなどの工程を経て完成させていきます。とても手間がかかるので、長年の経験と技術をもつ工場でしかできないと思います。

Q:色やサイズ、デザインなどについて教えてください。

カラーは全10色。定番カラーや少しアクセントのある色目もあります。色の決定は、好きな色アンケートの調査結果をもとに上位から順に選びました。サイズはレディースとメンズでそれぞれS、M、L、LLを展開。襟の仕様は、Uネック、Vネック、タートルネックの3種類あります。袖の織りは、高級感のある細リブ、カジュアルな太リブ、袋編みがあります。これらサイズ、袖・襟の織り方を選択できるセミオーダーセーターの価格は49500円。さらに着丈・袖丈の長さを指定するとプラス5500円~となっています。納期は一点ずつ丁寧に制作しますので最短で1か月です。

色は10種類の中から選べる
襟元はUネック、タートルネック、Vネックの3種類
袖口は、細リブ、太リブ、袋編みの3種類

Q:組み合わせで何通りものセーターができますね。

たとえば、レディース、タートルネック、Mサイズ、レッド、太リブを指定し、袖丈を3㎝長くしたものはこちらになります。

自分好みのお気に入りの1着を作ってもらえる

Q:どこで購入できるのでしょうか?

公式オンラインストアからご購入いただけます、また、田原本町のふるさと納税品になっていますので、田原本町ふるさと納税公式サイトからもご購入いただくことができます。

世界を相手にハイブランド製品を作り続ける松井ニットの工場

Q:SDGsの貢献としてはどのようなことがあるのでしょうか。

「LOOP」はオーダー制にすることで受注した分だけを作りますので、衣料品の廃棄を出しません。また、ニットは成形編みができるので、布生地と違って残布といったカットロスが出ません。また、「LOOP」の製品に使った残糸は捨てずに保管しますので、リペア(修理)サービスもお受けしています。穴があいたからといってセーターを捨てることなく一生使っていただけます。これ以外でも、売れなかったニット製品は解いて糸に戻し、編み直しをして再利用することもあります。

品質の良いものはリペアを繰り返して長く着られる

Q:すばらしいですね。これからどのような活動をしていきたいとお考えですか?

ニット工場の見学ツアーを企画し、できればインバウンド向けに日本の技術力の素晴らしさを見ていただきたいです。近隣の事業者とも協力しながら田原本町を盛り上げて行けたらなと思います。将来的には、介護施設用に脱ぎ着がしやすい介護ニットを考えるなど、介護する側もされる側も両方に負担がかからないようなニット製品を開発したいです。カシミアを使って、これまでにないアイデア商品にも挑戦していきたいですね。

Q:どうもありがとうございました。

事業所名:松井ニット
住所:奈良県磯城郡田原本町大網293
電話:0744-33-2332
営業時間:10:00~17:00
休業日: 日曜・祝日
LOOP
ふるさと納税

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