「狛犬」と思っていたものは実は違った!?知れば知るほど面白い奈良の雑学

 毎週月~金曜日 ゆうがた5時30分から放送している奈良テレビの「ゆうドキッ!」。今回は様々な角度から奈良を知るエキスパート・奈良まほろばソムリエの友松さんに「奈良の雑学」を教えていただきました。

テーマは「狛犬」です。実は奥が深いんですよ。

狛犬…ではないんです!

まず、MCのラフ次元・梅村さんと相方の空さんに「神社には行きますか?」と質問が。梅村さんは「あまり行かないです」、反対に空さんは「めっちゃいきます!」と答えます。そんなお2人に問題です。こちらは何でしょう?

「狛犬じゃないの?」「獅子舞?」「もしかしてシーサー?」と様々な声が上がりますが、どれも不正解。実はこれ「獅子」なんです。誰もが「狛犬」と呼んでいますが、正しくは向かって左側が「狛犬」、右側が「獅子」なんですね。

そもそも狛犬というのは、大陸から伝わった「獅子」がもととされているんです。オリエントや古代インドなどではライオン、つまり獅子が地上最強の動物とされていました。その獅子の力を王に宿らせるという思想があったと考えられています。また、インドでは仏を護る役割を獅子が担っていました。そうした獅子を模った像を置く風習ができたんです。それが日本に伝わり、天皇や高貴な方を守護するために宮中に置かれていたんですね。これを「神殿狛犬」といいます。本来は右が獅子・左が狛犬で平安時代の随筆「枕草子」の中でも「獅子、狛犬」と区別して書かれています。

ちなみに狛犬は犬じゃありませんよ。狛犬という想像上の生き物なんです!

獅子が口を開け、狛犬が口を閉じていますよね。阿吽の形になっていますが、これはサンスクリット語が「阿からはじまり 吽で終わる」ことから来ているんです。寺院の山門を護る仁王像の影響を受けたものと思われます。そして、江戸時代に各地の神社の参道に置かれるようになりました。天皇や高貴な方々を護ったように、獅子と狛犬が本殿の縁側で神様を護っていました。少しでも早く、遠くからでも神様を護れるようにと拝殿の前、さらに鳥居の前へとドンドン前に出たことによって民衆の身近なものになっていったんです。これを「参道狛犬」といいます。

しかし、古い時代に造られた狛犬って形や雰囲気が、今のものとは少し違うようですが…?

狛犬の特徴の1つに角があります。こちらは斑鳩町にある龍田神社です。なんと御年213歳の龍田神社の「獅子・狛犬」です。吽形の頭を見てください。

小さな角がありますよね。この角には邪気を祓う力があるとされています。もともとはこういった形だったのですが、左右別々の形を残したものは徐々に少なくなり、呼び方も「獅子」が消えて、2つ合わせて「狛犬」となりました。

一風変わった狛犬をご紹介!

漫画のようなユニークな顔でしょ?これは、奈良市宝来町にある蓬莱神社の獅子です。その他にも、同じ顔をした狛犬が「十五所神社」などにもいるんです。

奈良まほろばソムリエの友松さんは、この狛犬たちを「わらう狛犬3兄弟」と呼んでいましたが、調べていくうちに数が増えてきて「笑う狛犬五兄弟」になったのだとか!みんな江戸時代の末期に造られたもので、同じ作者によるものではないかと思われます。

先述しましたが、狛犬が民衆のものになったのは江戸時代です。しかし、当時の石工たちは「狛犬」を見たことがありません。そこで聞いた話をもとに想像し、狛犬を刻みました。ですから当初は、狛犬というよりも犬、豚、オオトカゲのような面白い狛犬が造られました。こうした彫りの浅い、初期型のものは「はじめ狛犬」や「はじめちゃん」などと呼ばれています。漫画「ワンピース」の作者が単行本の91巻で、「はじめ狛犬」のことに触れたことから注目を浴びたんですよ。それぞれの神社を地図でまとめました。

最後に、友松さんから「龍田大社」のそばにあるギャラリー華倭里(かわり)の狛犬キーホルダーをお土産にいただいた出演者。

3色展開で耳が立ったもの、口を開けているものなど、どれにしようか迷います。

観光名所などを何気なく見て回るのもいいのですが、何かに注目して見つめ直すと、違った魅力が見えてきます。新型コロナウイルスが終息を迎えたら、狛犬巡りをしてみてはいかがでしょうか。また、健康維持のための散歩やウォーキング中にも、近所の狛犬を気にかけてみると面白い発見があるかもしれません。

※この記事は取材当時の情報です。

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