地域で高齢者の外出を支援「矢田おでかけGO」

 高齢化がすすむなかで、お年寄りの方など体の調子などから出かけることに苦労する方もいるのではないでしょうか。移動手段がなく、外出が難しい高齢者を支援するため大和郡山市が始めた”ある取り組み”を取材しました。

8月3日、大和郡山市の矢田地区で「矢田おでかけGO」と題した事業の出発式が行われました。おでかけGOと書かれた8人乗りの車が向かうのは、外出が難しく、移動の支援を求める地域のお年寄りです。

自然あふれる丘の麓にあるこの地域。付近に鉄道の駅がないのはもちろん、最寄りのバス停まで場所によっては15分以上かかるのです。市内に住む高齢者を対象にアンケートを実施したところ「病院、スーパーが遠い」「免許を返納したため移動手段がない」などの声があったといいます。

矢田地区社会福祉協議会・澤井 宏純会長

「後期高齢者になってきてやっとえらいところに家を買ってしまったと、スーパー行くのにも遠いし病院行くのにも遠いと、どうしても家に引きこもりがちになる。やっぱり(家から)出てきていろんなところに行って元気、活力を得てもらおうとやっております。そのためにこういう支援をしなければと思ってやらせていただいている。」

 矢田地区の65歳以上の高齢者は約5500人。高齢化が進む地区で、市では城ケ丘自治会をモデルケースにこの事業をスタートさせました。「矢田おでかけGO」のシステムは以下のとおり。

 市がリースした最大8人乗りの普通自動車を矢田地区社会福祉協議会に無償で貸し出し、協議会が運営します。そして車は地域のお年寄りを乗せます。しかし向かうのは、スーパーや病院ではなく、路線バスの最寄りの停留所までです。

 計画を始めたのはおよそ2年前。市と協議会はそれ以降、毎月会議を開いてきました。地域の念願かなっての出発です。ドライバーを務めるのは地域のボランティア。利用者から運賃をもらわない形で地域の人たちが運営するのは県内でも珍しいといいます。車は矢田コミュニティ会館を出発。途中7カ所設けられた乗り場を経由します。そして、路線バスの時刻にあわせ「奈良高専前」のバス停まで送ります。帰りについては、決められた場所・時間に集合すると、自宅まで送ってくれます。

利用者は希望した約60人のうち運転免許を持っていないなどの理由で会員に登録された20人。週3日の運行日のうち、事前に利用日時を伝えておきます。この回では男性1人が利用。やってきた車に乗り込みます。

利用者は―

「スーパーへ。助かるんですよ。そりゃあ便利ですよ、ほんとありがたい。こんなにありがたいことないですね。この暑いときに荷物持って歩かないといけないじゃないですか。ずっと利用させていただきます。」

 車に乗って約10分。矢田おでかけGOが奈良高専前のバス停に到着しました。高齢化社会のなかでより暮らしやすく、地域の抱える課題を解決するため、支え合う姿がありました。大和郡山市では城ケ丘自治会のある矢田地区をモデルとして、今後、他の地域での導入を目指したいとしています。

※この記事は取材当時の情報です。

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