サルでもわかる、「全国旅行支援」の利用方法と注意点【永山久徳の宿泊業界インサイダー】

いよいよ、「全国旅行支援」が始まった。2020年末に「Go To トラベルキャンペーン」が停止して以来の全国規模での旅行支援となり、心待ちにしていた人も多いだろう。昨今の感染者数の低下、オミクロン対応ワクチンなどの効果もあり、旅行意欲が大幅に掻き立てられているという人も多いはずだ。

初日の様子はどう!? 早く予約したほうが良いのか?

初日はオンライン旅行サイトの販売開始時間以降、アクセスが相当集中し接続できないという報告が多くあったが、”早い者勝ち”というレベルでもないので、落ち着いて旅行先を検討すれば良いだろう。

旅行会社や宿泊施設への直接予約なども大きな混乱は無いようだ。電話の繋がりにくい旅行会社や宿泊施設もあるようだが、昨日までは「全国旅行支援」のルールや購入方法の問い合わせ電話がひっきりなしだったことと比べると、販売を開始してルールがある程度見えたことで、問い合わせの電話の本数は落ち着き、むしろ予約が取りやすい状況になっている宿泊施設もありそうだ。

しかし、人気観光地や宿泊施設では争奪戦の様相も出てきている。特に土曜日(「全国宿泊支援」で言う「休日」)は、現在公表されている適用期間である12月20日までのうちに、今週末を含めて10回しかない。11月の観光シーズンはもちろん、今年は忘年会もある程度は復活するだろうから、12月の土曜日などは満室になる宿泊施設も相当出てくるだろう。また、旅行会社によっては当初の割り当て予算が少なく、販売数を絞ったり、「ゆこゆこ」のように販売開始日前に売り切れを発表せざるを得なくされたりするケースもあるため、狭き門に感じられるかもしれないが、予算の追加配分は随時行われるはずであり、途中で販売枠が増える可能性が高いので過度な焦りは禁物だ。

その他の要因として、長引いたコロナ禍で従業員が減少してしまい、増強が間に合わないため部屋数いっぱいまで予約を取ることのできない宿泊施設も相当数ある。大きな施設なのに早々に満室になっているのは受け入れ体制の問題である可能性も考えられる。こちらもスタッフの採用や体制の最適化が進めば販売客室を追加するだろうから、お目当ての施設があるのであれば、諦めずにチェックを続ければ予約できる可能性はある。

割引額が良くわからない

報道されているとおり、交通+宿泊は1泊8,000円、宿泊のみは1泊5,000円、日帰りは5,000円となるが、都道府県ごとにローカルルールが数多くあるので注意が必要だ。現時点でも15都県で割引率の引き上げ(奈良県)、交通費の助成(高知県)、子どもへのクーポン上乗せ(岡山県)などを表明しているが、それぞれに適用条件が細かく設定されているので、すんなり理解できる人は少ないだろう。それでも、上乗せが無いとしても、例えば交通+宿泊で平日に3泊4日の旅行を3人で計画した場合、ほぼ10万円もの補助を手に入れることができるのだから利用しない手はない。

また、休日1,000円、平日3,000円のクーポンの計算にも注意が必要だ。ここで言う休日とはほぼ土曜日泊のことを指しており、祝日なども平日扱いになる。クーポン利用店舗も「Go To トラベルキャンペーン」の時と一致している訳ではないので要確認だ。最終日に家族で数万円分のクーポンを持て余すことにもなりかねない。

お勧めするのは、下手に割引額を計算するよりも、素直に宿泊予定の施設に問い合わせることだ。「迷惑をかけるのでは」と思われるかもしれないが、電話対応に時間がかかるのは、例えば今回の「全国旅行支援」の詳細が都道府県から発表されていないのにもかかわらず、宿泊施設に詳細を教えろと再三電話をかけてきたり、まだ行程を決めていない人が、様々なケースを順々に質問してきたりするためなので、行程や人数が固まった上で料金計算や詳細の条件を聞かれることについては歓迎できるお客様だ。むしろチェックイン時に話が違うと言われ、再計算する手間を考えれば効率が良いくらいだろう。

もちろん、これだけ複雑な制度なので、子どもの扱い、連泊の計算、端数の処理など、多くの変動要素がある。所在する都道府県のことだけ専業で扱っている宿泊施設の行う計算が最も信憑性がある。

ワクチン接種、陰性証明はどうすればいい?

ワクチン3回接種、陰性証明についても、基本ルールは定められており、接種証明がない場合はPCR検査、抗原定量検査または抗原定性検査の結果通知書が有効期間内であることが求められる。今回の全国旅行支援では厳格な運用が求められており、不正に対しても相当にシビアであるため、いくらフロントでの確認作業のみとはいえ、忘れた人に便宜を図ることはできず、ゴネられたとしても宿泊施設はどうすることもできない。この場合、もちろん全国旅行支援の対象外になってしまうので身分証明書と接種記録もしくは結果通知書は必ず準備しておく必要がある。

当日発熱していたらどうすればいい?

前項のように、「全国旅行支援」はワクチン接種、陰性証明が必須なので、理論上は発熱者であっても接種済もしくは陰性であれば、「全国旅行支援」を使った旅行が可能だ。もっと言えば、現行の旅館業法では陽性者であっても「全国旅行支援」の適用をあきらめて正規の宿泊料金を支払えば宿泊を断られることは無い。しかし、万一感染していた場合、他の宿泊客や従業員に対して迷惑をかけるケースも考えられるので、チェックイン時に正直に申告して宿泊施設の判断を仰ぐことが必要となる。

その結果、大浴場やパブリックスペースの利用自粛のお願い、他の症状が出ている場合は保健所への相談などを求められる場合があることは理解しておきたい。発熱を隠して宿泊した場合も罰則は無いが、クラスター発生源になるなど他のお客様や従業員に被害を及ぼした場合は民事上の責を問われる可能性もある。

常時マスクをしていなければ宿泊拒否されると聞いたけど

旅館業法の改正案がマスコミを通じて公表されたが、まだ国会を通過していないので、今回の「全国旅行支援」の期間とは無関係だ。現在は「宿泊しようとする者が伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められるとき」以外は病気を理由に宿泊施設側から予約を断られることはない。

ただし、検温やマスク着用のお願いなどに対しては、罰則は無くともマナーとしては従うべきだ。ここに関しては個々の主義主張ではなく、一泊する共同体として、最大公約数のルールが優先されるべきで、その良心によってこの「全国旅行支援」も成立しているからだ。もちろん、宿泊施設は感染防止対策を策定し、遵守することが全国旅行支援の参画条件となっており、それを破ることはできないという理由もある。感染防止対策に協力できないという主義の方を否定はしないが、この支援スキームにはそぐわないことは理解して欲しい。

ここまで読んでも結局良くわからない、、、という人へ

長々と書いてきたが、今日の段階ではこれだけ覚えておけば良い。

・まず、自分が対象者かどうか確認する。ワクチン接種証明を用意できるか、陰性証明を用意できる人以外はどうやっても対象にはならない

・人気観光地、人気宿泊施設については、週末を中心に早々に満室、販売終了になるケースも考えられるが、旅行会社への割当追加や、宿泊施設の追加販売の可能性もある

・割引額、クーポン額について、基本パターン以外は深く考えない方が早く判断できる。子どものカウントや都道府県独自の追加割引など、どうしても詳細を知りたければ現地に聞くのが最も早い。

・到着後であっても、必要書類を忘れた場合や、宿泊施設の感染防止対策に協力できない場合などは、まず今回の支援の対象外になるので注意すること

経済対策としてようやく始まった、「全国旅行支援」。これを国民が使うことにより、投入する税金をはるかに超える経済効果が生じ、結果税収として国庫に還流させる一大プロジェクトだ。旅行が可能な環境にある人は、主旨を理解し、久しぶりの遠距離旅行を十分に堪能して欲しい。

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